導入の前提
プライム ライフ テクノロジーズ株式会社様(以降PLTと表記)は建設現場のDXを推進するサービス『CONSAIT』を展開しています。CONSAITからは記録業務シンプル化アプリ「CONSAIT Basic」や配筋検査専用アプリ「CONSAIT Pro配筋検査」、配筋検査専用デバイス「CONSAIT Eye」(レンタルオプション)がリリースされ、建設現場の課題を解決しています。
この度、PLT様には2025年秋に発売された「CONSAIT Pro仕上検査(以降Pro仕上検査)」に音声入力システムvGate®ASR(ローカル型)を採用いただきました。発売前のお忙しいタイミングでお話を伺っています。
導入製品もしくはサービスについて
今回vGateASRを導入いただいた製品・システムの概要を改めて伺えますか。
今年10月29日にリリースされた「Pro仕上検査」というサービスの音声入力機能のためにvGateASRを採用しました。
CONSAITは建設現場の業務効率化に向けた様々なサービスを提供していますが、これは「Pro」の名前の通り仕上検査に特化したアプリケーションです。仕上検査というのは建設現場で行われる内装検査のことで、たとえばマンションなら各部屋のクロス(壁紙)やフローリングなどを目視で確認していくことになります。新築マンションを購入された方なら部屋の仕上がりを確認する内覧会の経験があると思いますが、それの施工業者版と思ってください。工事を受注したゼネコン様の施工管理者様による使用を念頭に開発しましたが、工事の発注元であるデベロッパー様が実施するものもあります。
vGate®ASR導入の背景
仕上検査特有の課題について
この度採用いただいた「CONSAIT Pro仕上検査」は、仕上検査の手間を大幅に省いて一連の業務を最適化するものと伺っています。これまでの仕上検査の工程には、どのような課題があったのでしょうか。
一言で言えば非常に手間と時間がかかるということです。
仕上検査では一室一室の内装をチェックしていきますが、検査を全て手作業でする場合はA3の検査シートの左側にプラン(図面)、右に設けられた指摘欄に1カ所ずつ指摘事項を書き込んでいくことになります。
チェックをする検査員と、指摘事項を書き込む書記に分かれる場合、検査員は見つけた修正点をどんどん口で言ってしまうので書記の手が追い付かない。一人で検査員をしながらシートに書き込むこともありますが、それはそれでチェックと記入の1人2役で大変なわけです。
検査シートだって1部屋ごとに1枚必要で、マンションの場合1棟に相当数の部屋があるのは普通ですからね。数フロア実施すればシートだけで大荷物になってしまいます。
そうして書き込んだものを、今度はその部分の協力会社ごとに振り分けて修正指示を出さなくてはいけません。例えばクロスとフローリングでは担当している会社が違うので、この指摘はこの会社、この指摘はこの会社にと振り分けが必要になります。1日かけて検査した後、今度は事務所に戻って指摘事項を振り分け、紙を協力会社用にコピーして、翌朝の朝礼でそれぞれの協力会社に渡して…と、紙ベースで実施すると施工管理者の作業は膨大なものになってしまいます。
タワーマンションになると、1棟で1000戸なんてこともざらです。仕上がったところから分けて検査をしても、数カ月かけて実施することになります。
「CONSAIT Pro仕上検査」が解決する課題
大変な作業であることが理解できました。この度vGate®ASRをご採用いただいた「Pro仕上検査」は、この仕上検査にまつわる課題が解決できるということですね。
そうですね、少なくとも検査シートを作る手間、協力会社に振り分ける手間に関しては時間短縮に成功したと思います。
まず、シートへの記入を音声入力で行えるようにしました。検査員が「LD天井クロス傷(=リビングの天井壁紙に傷あり)」と発声するだけで指摘欄に内容が反映されます。もちろん事前に作成したリストから選択したり、直接テキストで入力したりすることもできます。テキストの場合も予測変換ができるので、一から書くよりは格段に速くなります。
また指摘内容に応じて協力会社名が自動入力されて最後に帳票化されますので、業者に渡す書面を作るために夜遅くまで作業、というような事態にはなりません。
音声入力ができる建設現場用アプリというのは他社でも出しているのですが、「LD」と言って入力、「天井」と言って入力、のように分けた発話が必要なものも多く、連続で発話して入力できることは「Pro仕上検査」の特長の一つだと思います。


仕上検査時の雑音と音声認識
建設現場で使われると聞くと、色々な物音でかなりの雑音が生じるように思いますが認識精度はいかがでしょうか。
マイク性能が上がったことも一因ですが、きちんと認識しますよ。注1)
建設現場というと、隣もマンション建設中でうるさくて…という状況を想像されるかもしれませんが、そういう物音は人の声でないこともあって認識の邪魔になりません。
どちらかというと、仕上検査は複数人が立ち会ってザワザワと話をしながら行うことも多いので、その雑談を拾ってしまうことが音声入力時の課題でした。しかし先日大阪で行った展示会でもきちんとPro仕上検査の実演デモが働きましたし、会議室で皆が雑談している中でも問題ありませんでした。展示会のざわつきの中で入力できれば、現場でもまず大丈夫だと思っています。
注1):単一指向性Bluetoothイヤホンマイク使用
製品開発にあたっての苦労は
製品開発時、大変だったポイントはありますか?
アプリとしてはやはり音声認識精度の部分が苦労のポイントでした。現場で使うことを考えて通信を必要としないローカル型のシステムを採用しておりますが、音が近い単語に引っ張られて認識される語彙があったり、同音異義語をどう対処するかなど各種検討が必要でした。
私たちのシステムでは、例えば、1室名(例:LD)2部位(例:天井) 3部材(例:クロス)4指摘事項(例:傷)のように、指摘を4階層にわけてそれぞれ認識させる仕組みとなっています。発話される順番を制限しないためすべてのパターンを学習させようとすると天文学的数字になってしまい、精度向上の検討が大変でした。
今後の事業展開について
サービスの今後の展開について、現時点での展望をお聞かせください。
まずは新しくリリースする「Pro仕上検査」をゼネコン各社様に広めたいと思っています。

