お客様事例CUSTOMER CASE

創立140周年記念プロジェクトとして製作した夏目漱石のアンドロイド「漱石アンドロイド」の発話音声として導入しました。

Company

二松学舎大学

学校/教育

Interviewee

西畑様 中嶋様 越後屋様

この事例のポイント

導入の目的

  • 夏目漱石のアンドロイド「漱石アンドロイド」の発話音声として

導入前の課題

  • 可能な限り夏目漱石の音声に近いものを再現したいと思っていた
  • 夏目漱石の音声を復元する事が困難だった

導入効果

  • 漱石による祝辞や講演を聞いた学生や参加者は、漱石本人が喋っているかのような気持ちで真剣に耳を傾けています。
  • 朗読授業で漱石アンドロイドによる朗読を聞いた学生からは、本を読みたくなったという声も上がり、読書への誘い効果があることも分かりました。

インタビュー

AITalk導入の背景

音声合成やAITalkを導入前の背景や課題を教えてください。

夏目漱石による講演を実現することがプロジェクト発足のきっかけだったので、漱石アンドロイドには声が必要でした。
また、漱石が生きた時代では、文学は朗読で読み聞かせることが主流であり、漱石の作品にも朗読向きのものが多く残されています。もともと、漱石が自身の作品を朗読するとどのように聞こえるのだろうと考えていたこともあり、可能な限り夏目漱石の音声に近いものを再現したいと思っていました。


音声合成やAITalkの導入を決めた理由や選定方法を教えてください。

音声再現には以下の3つの方法を検討しました。
① 現存する夏目漱石の音声を録音した蝋管から音声を取り出す方法
② 他大学で研究された漱石の再現音声を活用する方法
③ 音声合成での再現
①に関しては、蝋管のダメージがひどく、復元することが不可能でした。そこで②と③での検討をすることになりましたが、石黒教授がこれまでに生み出したアンドロイドでは音声合成が利用されていることや、石黒教授からの「再現にあたり、ふさわしい声を持つ人がいる場合は音素登録をしたほうがいい」というすすめによりAITalkによる音声合成での再現に決まりました。
今回、このふさわしい人として音声収録を依頼したのが、漱石のお孫さんである夏目房之介氏でした。音声学的には体格が似ると声も似ると言われており、夏目漱石のお孫さんである夏目房之介氏は背格好が漱石にかなり似ています。さらには房之介氏の声と、房之介氏の父親であり漱石の長男である夏目純一氏の声はそっくりと言われていたこと、加えて純一氏と漱石もまた声が似ていたと言われていたことにより、漱石の声と房之介氏の声は似ているのではという仮説が生まれたからです。

AITalk導入による効果について

現在は「AITalk声の職人」で音声を作成しています。テキストを入力するだけで音声再生・保存が簡単にできるのが一番のメリットです。固有名詞などはやはり読み方を調整する必要がありますが、単語登録機能があるのですぐに読み方を調整することができます。
AITalkは日常的な会話文や、漱石が愛した漢詩を読むのに向いていると感じています。式典や講演会で漱石による祝辞や講演を聞いた学生や参加者は、まるで漱石本人が喋っているかのような気持ちで真剣に耳を傾けています。また、朗読授業で漱石アンドロイドによる朗読を聞いた学生からは、本を読みたくなったという声も上がり、読書への誘い効果があることも分かりました。
漱石が教師として赴任したことがある松山での講演には、松山でよく使われている「頑張って~いきまっしょい!」という掛け声も作ってみたのですが、これはあまりうまくいきませんでした(笑)
講演や朗読文章を読ませることが多いので長文を打ち込んでいますが、たまに長い文章になるとイントネーションが違うこともあるので、読点をつけるなどして工夫しています。AITalkはイントネーションの上げ下げが2段階のみですが、3段階くらいあると嬉しいなと思うときもあります。

今後の展開について

今回AITalkを導入いただいた「漱石アンドロイド」のプロジェクト概要や、プロジェクト発足のきっかけを教えてください。

AITalkは、創立140周年記念プロジェクトとして製作した夏目漱石のアンドロイド「漱石アンドロイド」の発話音声として導入しました。
「漱石アンドロイド」プロジェクトは、もともと創立140周年の節目に本学の著名な卒業生に講演してもらいたい。卒業生であり、日本を代表する小説家でもある夏目漱石に講演してもらえたら・・・という想いから始まりました。当然夏目漱石は故人であり、本人による講演は無理です。そこでアンドロイド研究の第一人者である大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授に監修を依頼し、夏目漱石はアンドロイドとして現代に蘇ることになりました。
「漱石アンドロイド」の声は、夏目漱石のお孫さんである夏目房之介氏に担当いただき、エーアイの音声辞書作成サービス「AITalkCustomVoice」により音声辞書を作成しました。
現在、「漱石アンドロイド」は創立140周年記念式典や入学式、卒業式、朗読授業、外部の講演会などに登場し、夏目房之介氏による収録音声の他、読み上げソフト「AITalk声の職人」で作成した音声で発話しています。





■漱石アンドロイドプロジェクト特設サイト(二松学舎ホームページ)
http://www.nishogakusha-u.ac.jp/android

 

漱石アンドロイドプロジェクトの今後の展開を教えてください。


「漱石アンドロイド」が様々な人たちと触れ合う中で、アンドロイドと接した人間の感覚に変化がおこることが分かりました。実際、漱石アンドロイドに語りかけられた人間は、あたかも現代に蘇った漱石本人に、漱石自身の言葉で喋りかけられているかのように感じてしまうのです。
今後は、漱石の話し方や特徴、動きなどの研究を深め、漱石アンドロイドを触媒として、漱石作品の研究者たちが今まで抱いていた漱石像と、漱石アンドロイドに対して抱くイメージの相違点について考察することで、新しい視点での漱石文学の研究がおこなわれる可能性を感じています。
また、大阪大学と共同で心理実験を実施し、人が「漱石アンドロイド」と触れ合い、対話をする中でアンドロイドに対して生まれる人間の感情や想像力の変化を研究・検証していく予定です。

 

この記事は2018年6月時点のものです。

二松学舎大学

本学は明治10年、岡山県倉敷市出身の漢学者・三島中洲が漢学塾として創立し、平成29年10月には創立140周年を迎えました。
創立当初から、現在に至るまで政治家や作家など著名人を数多く輩出しています。今回AITalkを導入した漱石アンドロイドのモデルである文豪・夏目漱石も漢詩文を学ぶため本学に通いました。
漢学塾、そして専門学校時代を経て本学は、昭和24年に新制大学に移行、現在は国文学科・中国文学科・都市文化デザイン学科を擁する文学部と国際政治経済学科・国際経営学科を擁する国際政治経済学部の2学部で構成された在籍総数約3,000名の大学となりました。140年がたった今も、創立当初からの建学の精神「己ヲ修メ人ヲ治メ一世ニ有用ナル人物ヲ養成スル」を守り続け、東洋文化への理解と国語力を礎に、世界へと漕ぎ出す人材を育てることを使命とした教育・研究活動を行っています。
■二松学舎大学ホームページ
http://www.nishogakusha-u.ac.jp/

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