故人の声を再現する方法は?AI音声合成を利用するときの注意点を解説

2025/04/30 / AI

近年、AI音声合成技術の進歩によって、故人の声を再現することが現実のものとなりつつあります。この技術は、故人の音声データや文章を元に、その人独自の声質や話し方を再現し、まるで本人が話しているかのような音声を合成する技術です。

本記事では、故人の声をAI技術で再現する方法や具体的な手順、活用事例、倫理的・法的な注意点について解説します。おすすめのソフト・アプリもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

故人の声を再現する方法

故人の声を再現する方法は、主に既存の音声データを用いたAI音声合成です。収録音声を学習させることで、まるで故人が話しているかのような音声を合成します。故人に喋ってほしい内容をテキストで入力することで、テキストに基づいた音声を生成します。

故人の声をAI音声合成で再現する手順

特定の人の声の再現をする場合も故人の声を再現する場合も、基本的な手順は同じです。ただし、特定の人の場合はAI音声を作成するのに適した文章を読み上げて収録が行えますが、故人の場合は残されたデータから作成することになるため、仕上がりに若干の差が生じる可能性があります

  1. 遺族の許可を取得

故人の音声を作成する前に、遺族または権利を管理する団体からの許可を取りましょう。

  1. 音声データの準備

故人の音声データを集めます。データ量が多く録音状態が良いほど、再現性は高まります。

  1. AI音声合成作成サービスに依頼

サービスを選択し、必要なデータがそろっているかを確認します。データが少ない場合は再現が難しい場合もあります。委託先で、故人の音声データを制作します。

  1. 委託先から音声辞書とソフトを受け取る

特定の声を再現する音声辞書と、テキストを音声として読み上げるためのソフトが提供されます(音声辞書はその人固有の音声ライブラリ、ソフトはその音声で実際にナレーションなどテキスト読み上げをするのに必要になります。一式で渡される場合もあります)。

  1. 用途に応じて使用

受け取った音声辞書とソフトを活用し、テキストを音声化します。

故人の声を再現した音声の活用事例

故人の声を再現することで、従来にはない形で故人を偲んだり、その存在を身近に感じたりできるようになります。また、著名人の声を再現し、広報活動やイベントなどで活用すれば、注目度向上や話題性創出につながる可能性があります。

偉人の声を再現

AI音声合成は、歴史上の偉人たちの声を現代によみがえらせる可能性を秘めています。偉人の声を再現することで、歴史教育の活性化につながります。

例えば、偉人のスピーチをリアルな音声で再現することで聴衆の没入感を高め、内容への理解や関心を深める効果が期待できます。また、下記の事例のように朗読や講演で偉人の声を再現すれば、まるで本人が話しているような臨場感を体験できます。

AItalkの活用事例

二松学舎大学の創立140周年記念プロジェクトとして、卒業生である夏目漱石の講演を再現するため「漱石アンドロイド」が制作されました。漱石の声を再現する手段として導入したのが、「AITalk®」です。漱石のお孫さんである夏目房之介氏の声を基に音声辞書を作成し、漱石本人に近い声を再現することに成功しました。

AITalk®は、テキスト入力で音声を簡単に生成できる点や、固有名詞の読み方を調整可能な単語登録機能が評価され、式典での祝辞、朗読授業、演劇など多様な場面で活用されています。特に、学生から「本を読みたくなった」という反響があり、読書意欲向上への効果も確認されました。

今後、漱石アンドロイドを通じた文学研究や心理実験の実施が予定されており、漱石像の新たな解釈や教育的効果の追求が期待されています。

参照:お客様事例|二松学舎大学

有名人(故人)の声を再現

故人の有名人の声をAI技術で再現することは、企業のブランディングや話題性創出に寄与します。

例えば、過去の広告で親しまれた有名人の声を使うことで、ブランドの伝統や信頼感を強調することができます。また、新製品発表会や企業の周年イベントで故人の創業者の声を再現すれば、大きな注目を集められるでしょう。

さらに、故人の音声を利用して既存ファンのロイヤリティを高めるとともに、新たなファンの獲得や感動の共有を通じて話題性を創出できる可能性も広がります。

AItalkの活用事例

エーアイは、音声合成エンジンAITalk®を用いて、X JAPANのギタリストでありソロアーティストとしても活躍したhide氏の声を再現しました。

株式会社エムアップの協力のもと、hide氏のオフショット映像やインタビューから収集した膨大な音声データを音素単位に分解。音声合成用辞書を作成することで、自然な音声再現を実現しました

この音声は、株式会社NTTドコモの「しゃべってコンシェル®」にキャラクターとして採用され、反響を呼びました。

参照:お客様事例|音声合成のエーアイ、hide氏の声を音声合成AITalk®で再現

自分の声を録音して再現

AI音声合成による故人の音声再生技術は、故人のみを対象とするものではありません。たとえば、生前に自身の声を録音し、未来の家族へ音声データを残す「終活」の一環としても活用が広がっています。

音声データを残しておけば、家族はいつでも故人と会話を楽しんだり、思い出を共有したりできます。従来の写真や手紙といった形式とは異なる、未来の家族とのつながりを築く新しい方法といえるでしょう。

故人の声を再現できるAI音声合成アプリ・ソフト

故人の声を再現できるAI音声合成アプリ・ソフトは複数存在し、それぞれに特徴があります。ここでは代表的なアプリ・ソフトを3つご紹介します。

AITalk® Custom Voice®

出典:AITalk® Custom Voice®

AITalk® Custom Voice®は、芸能人や声優、自分自身など特定の個人の声を収録し、オリジナルのAI音声を作成できる音声合成サービスです。新規に音声を収録できない場合でも、既存の収録音声からも音声を作成できるため、故人の声も再現することが可能です。

最新の音声合成エンジンAITalk6に対応しているため、より人間らしい自然な音声を再現できるのも魅力です。さらに「喜び」「怒り」「悲しみ」といった感情表現にも対応しています。

リメンバーAI

出典:リメンバーAI

リメンバーAIは、10秒の音源だけで大切な人や故人の声を本人そっくりに再現し、リアルタイムでの会話を可能にするAIサービスです。この技術は日本語音声生成AIを活用し、感情表現を含む音声を実現します。

制作には初期費用10万円と月額9,900円がかかり、納品には1〜3カ月程度を要します。また、声の権利化(肖声権)を目指し、ディープフェイク対策技術やトレーサビリティシステムの開発も進めています。

FutureVoice Crayon

出典:FutureVoice Crayon

FutureVoice Crayonは、音声合成技術により、自然な音声を生成できる製品です。わずかな音声データから高い再現性を実現し、短期間・低コストで音声を合成できます。

また、日本語特有の読み上げのあいまいさにも対応し、感情表現や多言語への適応も可能です。音声のチューニングや辞書を編集でき、APIを活用したさまざまな機器やアプリとの連携も可能です。

故人の声を再現する際の注意点

故人の声を再現する技術は進歩していますが、同時にさまざまな注意点も存在します。倫理的、法的、技術的な側面から、慎重な対応が必要です。

倫理的な問題

故人の声をAIで再現する際には、倫理的な側面への配慮が不可欠です。特に故人の意思の尊重とプライバシー保護は最優先事項となります。故人が生前に自身の音声データ利用についてどう考えていたか、生前の発言や記録から確認することが重要です。明確な意思表示がない場合は、遺族や近親者と十分に話し合い、合意形成を図る必要があります。

また、故人の音声データの利用範囲を明確化し、公開範囲も慎重に決定する必要があります。AIによって再現された故人の声は、故人の人格や尊厳を損なうような形で利用されるべきではありません。技術の進歩により故人の声の再現が容易になったからこそ、倫理的な観点を忘れずに責任ある行動を心がけることが重要です。

法的な問題

現状、声そのものに対する明確な権利は確立されていません。しかし、AI技術の急速な発展に伴い、声の無断利用が急増しており、問題となっています。

例えば、人気歌手やアニメキャラクターの声を無断で利用したAIカバー動画がネット上にあふれ、中には再生回数が100万回を超えるものもあるほどです。業界側からは「推しの権利を侵害している」といった批判や、「無法地帯になっている」といった危機感の声が上がっています。

また、AI音声合成サービスの中には、生成した音声を商用利用できるものとできないものがあります。商用利用を検討する場合は、各サービスの利用規約をよく確認し、適切なサービスを選択することが重要です。無断利用は法的トラブルに発展する可能性があるため、必ず権利関係を確認し、必要な許可を得て利用するようにしてください。

技術的な問題

AIによる音声合成技術は日々進歩しており、十分な長さと質の高い音声データがあれば、新規収録を行わずとも一定以上の品質で音声辞書を作成することが可能です。

しかし、感情表現を伴う音声を作成する場合には、該当する収録音声がないと再現が難しくなります。スタイル転写などの手法で作成することもできますが、収録音声を元にした場合よりも不自然な印象になる可能性があります。

また、元の収録音声以上の品質の音声辞書を作るのは困難です。例えば、故人の音源として古いレコードしか残されていない場合、その再現音声は「レコードから流れる故人の音声」に近いものになります。音源のざらつきを除去するなどの改善は可能ですが、古い音源を基に現代の期待に応える品質の音声辞書を作成するには限界があります。

AI音声合成を活用すれば故人の声を再現できる

AI音声合成技術を活用すれば、故人の声を再現することが可能です。故人の声を再現する技術は、家族や関係者が新たな形で故人をしのぶだけでなく、教育やエンターテインメント分野でも活用の場を広げています。AITalk®をはじめとする音声合成技術を活用することで、故人の声を未来へとつなぐ可能性が広がるでしょう。

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「AITalk® Custom Voice®」は、芸能人や声優、自分の声を収録し、日本語音声合成用のオリジナル辞書を作成するサービスです。
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