2025/08/22 / AI
機械設備の故障やトラブルを未然に防ぐために「予知保全」という考え方が広がっています。
従来の予知保全では、稼働中の機器や工場にセンサーを取り付け、温度や振動を常に計測し、その数値をもとに異常を判断するものが主でした。ただし、場合によっては工場の設計段階から検討が必要となり、後から変更しにくいという課題もありました。
一方で、近年はAIの活用によって導入の負担が軽減され、予知保全の精度も向上しています。本記事では、さまざまな予知保全の手法の中でも、AIを使った異音検知による予知保全について解説します。
予知保全とは、設備や機器の不具合につながる小さな異常を早期に把握し、故障が起きる前にメンテナンスを行う手法です。比較的新しい保全の考え方として注目されています。
一般的にその仕組みは、工場や機器に設置したセンサーで振動や温度を測定し、得られた数値から異常を判定します。さらにAIが複数のデータを組み合わせて分析することで、判定の精度を高めるものもあります。
近年はセンサーだけでなく、画像解析AIや音響AIを取り入れた新しい技術も広がり、予知保全の可能性がさらに広がっています。
予知保全について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
予知保全の目的は、機械を安全に稼働できる状態を維持しつつ、不要な点検や部品交換を減らすことにあります。
従来の手法である「予防保全」では、定期的に点検や部品交換を行います。この方法は安全性を確保できる一方で、まだ使用可能な部品まで交換してしまうことがあり、結果として余分なコストが発生する点が課題でした。
これに対して予知保全は、微細な異常を検知し、必要なときだけ対応します。そのため、コストを抑えながらトラブルを未然に防ぐことが可能です
予防保全については、以下の記事にも詳しく書かれています。あわせてお読みください。
まずは、どの課題を解決するために予知保全を導入するのかを、明確にする必要があります。現場で想定される課題には、以下のようなものがあります。
課題の内容によって、必要とされる技術やシステムの精度は異なります。導入前に課題を整理しておくことで、最適なシステムを選択できます。
音による予知保全は、音響処理とAIで設備の稼働音を解析し、異音を検出してメンテナンスの判断に役立てます。人の耳では識別しづらい微細な変化まで捉えられる点が利点です。以下の3つのステップで、異音検知の方法を説明します。
はじめに、機械や設備にマイクを設置し、稼働中の動作音を継続的に収集します。次に、そのデータを活用してAIモデルを構築します。使用するAI異音検知システムによっては、正常と異常の両方の稼働音を用いる場合もあれば、正常な音だけで構築できる場合もあります。
AIモデルが構築できたら、実際の現場で稼働音を集音し、設備状態を継続的に監視します。マイクで稼働音を収集し、データに変換してAI異音検知システムへ送ります。
システムは集音された稼働音を、構築したAIモデルと比較して、正常であるか異常であるかを判断します。異常が検知されたらシステムはアラートを通知し、故障が深刻化する前に点検や修理をするよう促します。
AI異音検知に役立つのが、エーアイが提供する異音検知ソフトウェア「vGate Aispect®」です。
このソフトウェアは、設備や機械の正常時の動作音や振動を学習し、独自の音響処理技術とAIを組み合わせて異音を高精度に検出します。
数値化できない潜在的な不具合を視覚化し、正常データのみでAIモデルの構築が可能です。異常時のデータを用意する必要がないため、導入のハードルが低いというメリットがあります。
音による予知保全には、以下のようなメリットがあります。
これまで熟練作業員の耳に頼っていた判断をAIが担うことで、誰でも一定の精度で点検できるようになります。
人による検査は、経験の差や疲労の影響で判定にばらつきが出る点が課題でした。AIは標準化された基準で処理するため、結果の安定性が高まります。
AIは、人間では聞き分けが難しいレベルの音の違いも正確に検知できます。そのため、微細な異常も聞き逃さず、故障の初期段階で兆候を捉えられます。
音による予知保全に必要な設備は、動作音を収集するマイクと、専用ソフトを備えたPCです。構成がシンプルなため導入しやすく、画像解析など他の予知保全手法に比べてコストを抑えられます。さらに既存設備を大きく改造する必要もなく、スムーズに導入できます。
数多くのメリットがある音による予知保全技術ですが、デメリットもいくつかあります。
AIが正常な音を異常音と判断してしまう「誤検知(False Positive)」や、異常音を正常と判断してしまう「誤報(False Negatives)」の発生リスクがあり、検知精度の確保が課題です。
工場や屋外などの現場では、バックグラウンドノイズ(騒音)が多いため、誤検知が発生しやすく、正確な収集や解析が困難です。
不要な音を除外するためには、高度な信号処理技術や特殊なアルゴリズムの導入が必要な場合があります。
高精度の異音検知AIモデルの構築には、現場ごとの設備や稼働環境に応じた音声データの収集と分析が必要です。何度も現場とのやり取りを重ねて、AIモデルのチューニングや再学習をする必要があり、導入完了までには一定の時間と労力を見込む必要があります。
音響処理のAI予知保全システムの具体的な導入手順を解説します。
企業担当者は、AIシステムを構築するベンダーに、正常音や異常音(必要な場合)の種類別のデータを指定された長さで提供します。
ベンダーは、提供したデータからAIモデルを構築します。モデルが構築されたら、実際の動作をマイクで集音し、比較して異常検知するかをテストします。
目的に応じて必要な精度が出せた時点で納品です。しかしながら、一度で理想的な精度のモデル構築は難しい場合もあるため、何度もテストを繰り返しながら精度を高めていきます。
音による予知保全の具体的事例を紹介します。
山奥にある発電所を24時間365日間監視したいものの、コストがかかってしまう点が課題。
システム適用後は、音と振動データを用いたAIモデルを作成し、遠隔地の設備監視を実現しました。異常があった場合でも、離れた場所から検知できるようになり、人手にかかるコストや負担を減らしつつ24時間365日の監視が可能になったということです。
音による予知保全はさまざまな業界で活用されており、他にも多くの事例があります。
出典:AI予知保全システム「vGate Aispect®」適用事例
※詳細資料がダウンロードされます。
AIによる異音検知は、予知保全だけでなく完成物の良否判定(不良品検知)にも活用できます。
人の耳では良否判定が難しく、特にベアリングの回転速度が変わった時の異常を検知できないという点が課題。システム適用後は、人の耳で判断が難しい正常・異常を判別可能にし、ベアリングの回転速度によらずに異常検知も可能になったということです。
vGate Aispect®はさまざまな業界で良否判定に活用されています。
出典:AI予知保全システム「vGate Aispect®」適用事例
※詳細資料がダウンロードされます。
本記事では、音によるAI予知保全について解説しました。
予知保全はAI技術の活用で導入のハードルが下がり、精度も大幅に向上しています。設備の安定稼働や製品の品質維持、安全性確保のためには、適切な保全が欠かせません。
エーアイが提供する音のAI予知保全システム「vGate Aispect®」は、独自の音響処理とAIの技術で、機械や設備の稼働音を分析し、異常を検知します。
これまで熟練者の経験や勘に依存していた微妙な音の判別や、時間や場所の制約で難しかった検査も実施できるようになります。vGate Aispect®のAIモデルは正常稼働時の音だけで作成できるため、入手が難しい異常データを集める必要がありません。点検を自動化できることで、作業員の負担軽減にもつながります。
[vGate Aispect®の資料ダウンロード ]
AI予知保全の導入を検討している方や、音による検知に興味をお持ちの場合は、エーアイまでお気軽にご相談ください。
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