2025/10/02 / AI
人の声を認識して動作する「音声認識ロボット」は、人手不足の解消やコミュニケーションツールとして、さまざまな場面で活用されています。しかし、音声認識ロボットを効果的に導入するためには、利用シーンに合わせた製品選びやカスタマイズが欠かせません。
本記事では、音声認識ロボットを導入する際のポイントや、処理方式による違い(サーバー型・ローカル型)について、機器組み込みの観点から分かりやすく解説します。
音声認識とは、人間の話し声をAIが理解し、テキストや指示に変換する技術をいいます。音声認識をロボットに組み込むことで、自然なコミュニケーションが可能になります。
なお、音声認識には、クラウド上で処理を行う「サーバー型」と、ロボット本体内で音声処理を完結する「ローカル型」があります。サーバー型は膨大な語彙数の認識が可能ですが、ネット環境やセキュリティの制約を受けることがあります。一方、ローカル型はネット接続に依存せず、安定した応答が得られます。
出典:vGate ASR®
それぞれメリット・デメリットがあるため、現場の状況に応じた選択が重要です。
音声認識については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
音声認識ロボットを導入する際は、以下の注意点を押さえておきましょう。
ディープラーニングなどの技術の進歩により、音声認識の高精度化が進んでいます。高度な処理には多くの計算リソースが必要なため、サーバー型の音声認識サービスを利用するケースが一般的です。
一方、ロボットが扱う情報に個人情報や機密情報が含まれる場合、インターネット接続はセキュリティ上の制約を受けることがあります。たとえば医療現場や金融業界では、外部ネットワークへの情報送信自体が規定で禁止されている場合も多いです。接客や受付業務においても、顧客のプライバシー保護の観点から外部送信を避ける傾向にあります。
また、移動しながら利用するコミュニケーションロボットや、インターネットの接続環境が不安定または確保できない場所では、サーバー型音声認識は利用できません。このような場合は、端末内で処理できるローカル型の音声認識が必要です。
AI音声認識のレスポンス速度は、会話の自然さに影響します。レスポンス速度とは、ユーザーが話しかけてからロボットが反応するまでの時間のことです。レスポンスの速度を決める要素は「ネットワーク環境」と「発話区間検出」の2つです。
「ネットワーク環境」について、サーバー型は高精度な認識が可能ですが、音声データの送受信にインターネット回線を使うため、接続が不安定だと反応が遅れることがあります。一方、ローカル型はロボット内で処理を完結するため、常に安定した応答が得られます。
「発話区間検出」とは、話し終えたタイミングを判断する技術です。精度が低いと不自然な間が生じて会話が途切れてしまいますが、精度が高ければリアルタイムに近いスムーズな対話が可能になります。
AI音声認識は、話し手の年齢や話し方によって認識率が変わる場合があります。高齢者や幼児の発話は、発音が不明瞭だったり個人差が大きかったりするため、標準設定のままでは認識精度が十分に発揮されないときもあるでしょう。
この課題には、利用シーンに合わせたカスタマイズが有効です。よく使うフレーズや話し方を事前に登録したり、発音パターンを追加学習させたりすることで、認識率の向上が期待できます。
サーバー型はクラウドサービスの利用料やサーバー維持費がかかるため、導入台数が少ないと割高になることがあります。既存のクラウドサービスを使う場合も、料金体系が運用規模に合っているかを確認するほうがよいでしょう。
一方、ローカル型は端末単位での従量課金が可能なため、台数や利用頻度が不確定な場合でもコストを把握しやすくなります。
ネットワーク接続式の「サーバー型」と、ロボット本体で情報を処理する「ローカル型」、どちらを選べばよいのか、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
サーバー型のメリット・デメリットは、以下の通りです。
<サーバー型のメリット>
<サーバー型のデメリット>
ローカル型のメリット・デメリットは次の通りです。
<ローカル型のメリット>
<ローカル型のデメリット>
音声認識ロボットを導入する際は、「誰が」「どこで」「どのように」利用するかを明確にし、必要な機能と環境条件を総合的に検討することが重要です。導入前に現場ごとの要件を整理し、その内容をもとに最適なシステムを選びましょう。
作業用ロボットでは、音声認識に加えて声認証を導入すると、特定の利用者だけが操作できるようになり、誤操作や不正利用を防げます。コミュニケーションロボットでは、利用者ごとに応対やサービスを最適化できるため、利便性と満足度の向上が期待できます。
声認証については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
ロボットを「OKロボット」といった特定の言葉で起動できる仕組みは、非接触で操作できるだけでなく、誤作動を防ぎ、衛生面にも配慮できます。
ロボットが騒音のある環境でも正確に音声を認識するには、ノイズリダクション技術や高性能マイクの搭載が欠かせません。これらは、認識精度を左右する重要な要素です。
ロボットがユーザーの発話開始と終了を正確に判定することで、自然で素早い応答が可能になります。快適な対話体験を支える基盤となり、業務効率や顧客満足度の向上にも寄与します。
高齢者や子ども、方言話者など、特定ユーザーの発話特徴に合わせてフレーズ登録や追加学習ができるAI音声認識システムを選ぶと、現場ごとの認識精度を高められます。将来的な用途追加や業務拡張への柔軟な対応も考慮しましょう。
クラウド型とローカル型の選択は、インターネット接続の有無や端末の処理性能によって左右されます。ネットワーク環境や利用場所、求められる応答速度、セキュリティ条件を整理したうえで、最適な方式を検討することが大切です。
エーアイの音声認識エンジンvGate ASR®は、ディープラーニングを活用した高精度な音声認識を実現するシステムです。通信制限のある環境や機密性の高い業務にも対応でき、機器仕様や利用シーンに合わせた柔軟なカスタマイズも可能です。
加えて、高性能なノイズ除去機能と独自の発話区間検知技術を備えており、工場など騒音の多い環境でも円滑な対話を支えます。
クラウド型とローカル型の選択に迷う場合や複数の利用パターンを検討している場合、将来の拡張性を重視したい場合には、エーアイまでご相談ください。経験豊富なスタッフが導入から運用まで丁寧にサポートします。
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GROOVE X株式会社が開発する『LOVOT』に、エーアイの音声認識システムvGate ASR®が採用されました。
お子様の発話音声や『LOVOT』に話しかける特有の言葉を学習させた専用モデルを開発し、お子様の声の認識率を向上させています。また、ローカル型のvGate ASR®を採用することで、部屋を移動したり持ち歩いたりしても安定したやりとりが可能になりました。
さらに、2023年の中国展開にあわせて「vGateASR(中国語)」を採用いただきました。中国語に特化したチューニングを施し、発話検知の精度を向上させています。