OpenAI社の音声合成サービスとは?日本産の音声合成サービスと比較

2025/06/18 / AI

AIによる音声生成のイメージ

近年テキストから自然な音声を生成する音声合成技術が飛躍的に進化しています。ChatGPTなどで知られるOpenAI社が提供するAI音声合成サービスがローンチされたことで、関心を高めている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、生成AIが作る音声の現状、そしてOpenAI社の音声合成サービスと国産のAI音声合成を比較します。それぞれのメリット・デメリット、そして選び方まで網羅的に解説していますので、導入の参考にしてください。

生成AIが作る音声の現状

文字情報から読み上げ音声を作る音声合成技術(TTS:Text-To-Speech)は、最近の技術の進歩によって大きく発展しています。

新しい手法の開発に加えて、GPUなどの計算機の性能が向上したことにより、DNN(ディープニューラルネットワーク:深層学習)の活用が広がっているのです。画像認識の分野で成果を出してきたDNNは、音声認識や音声合成の分野にも応用され、合成された音声の自然さや人間らしさが大きく向上しました

また、生成AIで知られるOpenAI社も音声関連の新しいモデルを発表しています。その中でも、「gpt-4o-mini-tts」は、自然で感情を豊かに表現した読み上げ音声を出力する音声合成モデルとして注目を集めています。

OpenAI社の音声合成サービスの特徴

ChatGPTなどの生成AI開発で知られるOpenAI社は、テキストから読み上げ音声を生成する音声合成サービスをWebAPI(http/httpsなどの技術を利用して、Web上で異なるアプリケーション間の連携を実現するためのAPI)として提供しています。

OpenAI社の音声合成サービスのメリット

OpenAI社の音声合成サービスのメリットを以下で紹介します。

自然で高品質な音声

最新の深層学習技術を駆使しており、自然な音声を実現しています。単に複数の固定ボイスがあるだけでなく、ユースケースに合わせて話者のタイプ(声質、話し方など)をある程度指示し、生成できます。これにより、コンテンツに最適な声を見つけやすくなります。

2025年3月21日にリリースされた最新モデル「gpt-4o-mini-tts」では、話者(音声)の種類が従来の6種類から11種類に大幅に増加し、WebAPIを通じて話し方の指示(例:「怒ったように」「やさしく」)も可能になりました。感情表現や抑揚のバリエーションが向上しています。

多くの言語に対応

英語や日本語など、50以上の多言語に対応しており、グローバルなコンテンツ制作や多言語対応サービスに活用できます。特に英語に関しては、自然で流ちょうな音声生成が期待でき、高品質な音声コンテンツを作成できます。

API経由での容易なシステム連携

WebAPIとして提供されているため、既存のシステムやアプリケーションへの組み込みが比較的容易です。また、OpenAIはAI技術の研究開発を随時進めており、音声合成モデルも常に改良されていることから、トレンドをいち早く取り入れた進化も期待できます。

比較的安価な従量課金

利用量に応じた従量課金制が採用されており、ナレーション音声をプロのナレーターから録音する場合と比較してコストを抑えられます。小規模な利用や開発段階でのテスト導入もしやすい料金体系と言えます。

OpenAI社の音声合成サービスのデメリット

一方、デメリットとしては以下が考えられます。

感情表現や抑揚の細かな調整の限界

OpenAI社の音声合成サービスはWebAPIでの提供となるため、感情の強さや間の取り方、アクセントなどを直感的に細かく調整したい場合は、GUIが使えるエディター製品と比べて扱いにくく感じることがあります。

WebAPI提供のみ

OpenAI社の音声合成サービスはWebAPIを通じて利用する仕組みです。そのため、インターネットに接続できない環境や、セキュリティの関係でデータを外部に出せないオンプレミス環境(自社サーバー内)では利用できません

エーアイ「AITalk®」の特徴

aitalk webapiのロゴ

OpenAIの音声合成が注目を集める一方、日本国内で長年高品質な日本語音声合成技術を提供し続けているのが、株式会社エーアイの「AITalk®」シリーズです。

中でも「AITalk® WebAPI」は、OpenAI社の音声合成サービスと同様のWebAPIサービスであり、システム連携を前提とした利用が可能です。

AITalk®のメリット

AITalk®のメリットは、以下の通りです。

日本語音声の自然さと品質の高さ

AITalk®は、長年の研究開発に基づいた独自の音声合成技術により、自然で人間らしい日本語音声を生成します。機械的な読み上げではなく、日本語特有の複雑なアクセントやイントネーションに対応しています。

感情表現や抑揚の細かな調整が可能

一部の話者では、「喜び」「怒り」「悲しみ」といった感情表現に対応しています。間の取り方も細やかに再現できるため、ナレーション、アナウンス、eラーニングなど、聞き取りやすさや表現力が求められる用途に最適です。

豊富な話者ラインナップとカスタムボイス対応

AITalk®は、子供から大人まで多彩な標準話者が用意されており、コンテンツの雰囲気やターゲットに合わせて最適な声を選べます。さらに、タレント、声優、キャラクターなど、特定の個人の声を学習させてオリジナルの音声を作成する「AITalk® Custom Voice®」に対応している点も魅力です(別途費用がかかります)。

多様な導入形態(WebAPI以外も含む)

AITalk® シリーズは、WebAPIだけでなく自社サーバーに構築可能な「AITalk® Server」や、完全オフラインで動作するインストール版ソフトウェア「AITalk® 声の職人」など、多様な提供形態を用意しています。これにより、セキュリティ要件が厳しい環境や、オフラインでの利用が必要な状況など、さまざまなニーズに対応できます

国内ベンダーならではの手厚いサポート体制

株式会社エーアイは日本の企業であり、日本語で手厚いサポートが受けられます。導入前の相談から運用中のトラブル対応まで、国内の商習慣やニーズに精通したサポートは、安心してAI音声合成サービスを利用する上で重要です。

チューニング機能(ユーザー辞書など)

固有名詞や専門用語、製品名などの正しい読み方やイントネーションを登録できるユーザー辞書機能により、特定の単語を正確に読み上げることが可能です。

AITalk®のデメリット

続いて、AITalk®のデメリットも見ていきましょう。

単価で見るコストパフォーマンス

AITalk® WebAPIも従量課金ですが、単価はOpenAI社の音声合成サービスの方が安くなっています。安価にAPIで音声合成をしたい場合には、OpenAI社を選ぶ方が多いでしょう。

外国語への対応

OpenAI社の音声合成サービスと比較して、対応言語数が少なく、言語によっては表現力や自然性に劣る可能性があります。

一方で、日本語の表現に特化するなら、現時点ではAITalk®のほうが高品質といえるでしょう。話者の選択肢や感情表現が豊富な点も魅力です。

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【早見表】OpenAI社の音声合成サービスとAITalk® Web APIの違いまとめ

OpenAI社の音声合成サービスは、低コストで手軽に高品質な音声合成を利用できる点がメリットです。しかし、日本語の微妙なニュアンスや表現において、改善の余地があると感じられる場面もあります。

一方、日本語音声合成で長年の実績を持つAITalk®は、自然で高品質な日本語の読み上げに強みを持っています。提供形態も豊富で、さまざまな用途やシステム環境に合わせて柔軟に選択できます。

どちらのサービスが最適かは、使用言語、音声の品質、利用環境、必要な機能、そしてコストやサポート体制などを総合的に比較検討する必要があります。

項目OpenAI社の音声合成サービスAITalk® WebAPI
外国語多言語(50以上)対応。比較的流暢要相談
日本語音声自然だが、表現の調整に限界も高品質で自然。感情・抑揚の調整が得意
調整機能シンプル感情表現、抑揚、話者ラインナップ豊富
カスタム声要確認作成可能(別料金)
導入形態クラウド(API経由)クラウド、オンプレミス、インストール型ソフトウェア、専用サーバー
サポート基本的に英語中心国内ベンダー、手厚い日本語サポート
コスト比較的安価な従量課金高品質・機能に応じた体系

OpenAI社の音声合成サービスとAITalk®を選ぶポイント

OpenAI社の音声合成サービスとAITalk®はそれぞれ異なる強みを持っています。プロジェクトの目的や重視する点に合わせて、最適なサービスを選択することが重要です。

OpenAI社の音声合成サービスが適しているケース

まず、OpenAI社の音声合成サービスが適しているケースを見ていきます。

グローバル展開を視野に入れている企業や多言語対応が必須のプロジェクト

OpenAI社の音声合成サービスは、多くの言語に対応しています。マイナー言語を高品質な音声で生成できるため、グローバル市場をターゲットにしたコンテンツ制作やサービス提供に向いています。

OpenAIは英語圏を拠点とする企業であり、最新の深層学習モデルは英語の音声データに基づいて構築されています。そのため、特に英語の読み上げにおいて、自然でネイティブスピーカーに近いイントネーションやリズムを実現します。

<具体例>

越境ECサイトの多言語ナレーション、海外ユーザー向けアプリの音声ガイド、グローバル対応のIVRシステム

コストを抑えつつ、最新のAI技術による高品質な音声生成を利用したい場合

OpenAI社の音声合成サービスは、利用量に応じた従量課金制を採用しており、比較的安価に高品質な音声生成AIを利用できる点が特徴です。また、OpenAIはAI技術の研究開発を高速で進めており、その成果がTTSモデルにも継続的に反映されることが期待できます。

常に進化し続ける最新の音声合成技術を、手軽かつ低コストで利用したいと考えるユーザーや企業に適しています。

AITalk®が適しているケース

次に、AITalk®が適している具体的なケースを見ていきます。

高品質で自然な日本語音声が最優先される場合

AITalk®は、日本語音声合成の研究開発に長年取り組んできた国内ベンダーの技術が活かされています。そのため、OpenAI社の音声合成サービスと比べて、日本語特有のアクセントやイントネーション、間の取り方、漢字や専門用語の読み上げにおいて、より自然で高品質な音声を実現しています。

<具体例>

駅やバス車内、商業施設などの公共アナウンス、高い聞き取りやすさや信頼性が求められる企業向け研修コンテンツ

感情表現や細かな音声調整が重要なコンテンツ制作

AITalk®シリーズは、単語ごとのアクセント、話速、声のトーン、さらには「喜び」「怒り」「悲しみ」といった感情表現を、直感的に細かく調整できる機能が充実しています

WebAPI経由でもSSMLなどである程度の制御は可能ですが、より表現力豊かで意図通りの音声コンテンツを作りこみたい場合には、AITalk®の編集機能がアドバンテージとなります。

<具体例>

動画ナレーションやキャラクターボイスなど、表現力が求められるクリエイティブコンテンツ

ブランドイメージに合わせたオリジナルAI音声を作成したい場合

AITalk®は、「AITalk® Custom Voice®」サービスにより、特定の個人の声(タレント、声優、企業担当者など)を学習させて、オリジナルの音声を生成できます。これにより、目的に沿ったカスタムのAI音声合成を実現します。

<具体例>

特定のタレントや有名人の声を使ったコンテンツ、ブランド認知を高めるための統一された音声

セキュリティやネットワーク環境に制約がある場合(オンプレミス・オフライン利用)

OpenAI社の音声合成サービスが基本的にWebAPIのみの提供であるのに対し、AITalk®シリーズはWebAPIだけでなく、自社サーバー内に構築可能な「AITalk® Server」や、インターネット接続が不要なインストール版ソフトウェア「AITalk® 声の職人®」など、多様な提供形態を用意しています。

<具体例>

機密情報を扱うため、データを外部に出せない環境インターネット接続が不安定、または利用できないオフライン環境セキュリティポリシーが厳しく、クラウドサービスの利用に制限がある企業

国内ベンダーによる手厚いサポートを重視する場合

株式会社エーアイは日本の企業であり、日本語での導入相談、技術サポート、トラブル対応などが手厚く受けられます。日本の商習慣やニーズへの理解も深く、安心してサービスを導入・運用したい企業にとって、国内サポート体制は重要な選定基準となります。

AITalk®の活用事例

AITalk®がどのように活用されているのか、実際の導入事例を通して見ていきましょう。

AI対話システムの事例

AIソリューションを提供する株式会社Nextremer様が開発・提供するAI対話システム「minarai」は、高度な自然言語処理機能を持ち、ロボットやタブレットなどさまざまなインターフェースに搭載可能なシステムです。この「minarai」の発話音声として、株式会社エーアイの音声合成エンジン「AITalk」が導入されています。

開発初期に試用した他社の音声合成サービスでは、合成音声特有の不自然さが拭えず、ユーザーに親しみを感じてもらいにくい問題があったといいます。また、その不自然さを解消するための音声チューニング作業にも、多くの工数がかかっていました。

AITalk® WebAPIの導入により、「minarai」の発話音声は飛躍的に自然になり、システム全体の信頼性や聞き取りやすさが向上しました。また、音声チューニング作業の効率化が実現したことで、開発リソースを他の重要な機能開発に振り向けることが可能になったとのことです。

導入の決め手となったのは、AITalk®が提供する自然で人間らしい日本語音声です。また、ユーザー辞書によるチューニングのしやすさや、国内ベンダーならではの迅速な対応も重要なポイントとなり、導入を後押ししました。

参照:お客様事例|株式会社Nextremer

研修教材ナレーションの事例

アサヒ飲料株式会社様では、品質保証部における新入社員向けの研修教材ナレーション作成に、株式会社エーアイのインストール版ソフトウェア「AITalk® 声の職人®」を導入しています。

導入以前、同社では研修教材のナレーションを社内担当者が収録していました。しかし、コロナ禍による在宅勤務の普及に伴い、自宅での収録環境の整備が難しいことや、読み間違いが発生する度に最初から収録をやり直す必要があるといった課題に直面しました。

そこで、今後のeラーニング教材活用の増加を見込み、音声合成ソフトの導入を検討開始。複数の製品を比較検討した結果、AITalkが選定されました。

導入の決め手となったのは、繰り返しの作業でも単語を適切に変換できる点の多さ、そしてユーザーインターフェースの直感的な操作性です。これにより、人の声で収録する際に発生していた環境整備や撮り直しの問題が全て解消され、品質の高いナレーションを手軽に作成できるようになりました。

参照:お客様事例|アサヒ飲料

OpenAI社の音声合成サービスとAItalk®はそれぞれの強みを生かして使い分けを

OpenAI社の音声合成サービスとAITalk®は、どちらも高品質な音声生成が可能ですが、それぞれ特徴や強みが異なります。対応言語、日本語の自然さ、表現力、調整機能、サポート体制、カスタムボイスの要否など、プロジェクトの特性に合わせて最適なサービスを選択しましょう

AITalk®は、日本語の自然さや表現力の豊かさに特化しています。感情表現や抑揚の細かな調整機能が充実しており、日本のコンテンツ向けに、より人間らしい、聞き手に響く音声を作成するのに最適です。

導入前のサポートも対応していますので、お気軽にお問い合わせください。

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WEBサービスに最適!手軽に多言語の音声合成を利用
AITalk® WebAPI

WEBサービスなどから、多言語の音声合成エンジンをSaaS型で利用できるサービスです。自社で音声合成用のServer構築や運用をする必要がないため、WEBサービスやスマートフォンアプリ、キャンペーン他、様々なサービスで手軽に音声合成を利用したサービスを開始することができます。

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